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辞めろとは言えない

自分の転職人生を振り返ってみて、渡り歩いた数々の会社の中でも印象に残っているのはこのブログでも何度か書いたことのある、接客業の仕事です。

飛び込みやルート営業などの営業職ではなく、接客業として、お店に来るお客様をお迎えして親切丁寧に応対する、そんなイメージでその会社に入りました。

でもその会社(小さい会社だったので、数人の役職者がいたのみですが)が求めていたのはそのような受け身の人材ではなく、積極的にアプローチをかけていってどんどん売り上げを伸ばしてくれる、まさに営業職としてのそれでした。

結局は、接客を伴う営業職だったのです。

それまで営業職に携わってきたとはいえ、営業が嫌になって転職したくらいですから、もちろん自分なりに頑張ってはいたと思うのですが、私は、そして私の働きは会社の求めるものとは程遠いものだったようです。

とは言え私も30を過ぎ、幼い子どもたちもいたし、この会社で何とか長くやっていきたいという思いがあったので、辞めるという考えは全く頭の中にありませんでした。

だからだと思うのですが、後で振り返ってみれば、私に辞めてほしかったんだな、と上司たちが思っていると感じられる場面がいくつか思い起こされるのですが、その当時はそのことに気が付きませんでした。


例えば、ある日の社内での営業会議の時に、上司に、

「今やりたいことを何でもいいから言ってみて」

と聞かれ、私はその頃、精神的に疲れていたのか、正直に

「南の島へ行って何も考えずのんびりしたいです」

と答えました。

その答えを聞いた、その場にいた会長はいかにもがっかりしたという感じで、こう言いました。

「あのね、生きていれば何かしら心配事なんかは必ずあるんだよ、そういう考えはどうなのかな」



また、とある日のお店で食事会のことですが、大きい円卓を囲んで社員、バイトと7~8人ほどだったのですが、食べ放題だったので食べたいものをいろいろ注文していました。

役職者たちは何かの話でずっと盛り上がっていて、仲の良い社員とバイト同士は何かずっと話をしていて、私はほぼ一人で黙々と食べていました。

結構長い時間その状態が続き、さすがに私もお腹いっぱいになり、でも話し相手もいなくて、仕方が無いのでちょっと散歩してきます、と言ってその辺りをブラブラしてきました。

しばらく経って戻ったのですが、その時会長が

「あれ、どこ行ってたの、姿が見えないから、将来を悲観して自殺したのかと思った」

と言いました。もちろん、冗談ぽく、です。

でも今にして思えば、結構本気だったんだな、それくらい辞めてほしかったんだな、と感じます。



その後、会社を辞めることになり、そのことは会長の耳にも入っていたと思うのですが、普段ほとんど会わない会長が会社に来た時も、私に対して特に言葉をかけることはありませんでした。かける言葉など無かったのでしょう。


困ったものですね。お前はうちの会社には必要ないから辞めてくれ、と言うことができればいいのに。辞めろとは言えないのですね。それで、辞めろと言われない社員のほうはラッキーとばかりに必要とされていないその会社で分不相応の給料をもらい続けるのですね。

私はその会社に5、6年ほどいましたが、それが良かったのかどうかはよく分かりません。会社の為にはさっさと辞めた方が良かったのかもしれませんが、こちらとしても生活もあるし、いちおう最低限の仕事はしているつもりではありましたから。




まだその会社にいていろいろと転職先を考えていた頃、ある人に、(年齢的や、違う業種に)今から転職してもせいぜい工場のラインに入るか、トラックの運転手くらいしか無いよと言われたことがあり、そのことをちょっと親しくなったお客さんにそのまま話したら、

「俺はその工場のラインに入ってやってますけど、別に満足してますよ」

と言われ、気まずい思いをしたことがあります。

その後、実際に私は工場のラインに入り、それからトラックの運転手になりましたが、まあ確かに、別に満足しています。

円卓.png






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